こんにちは。AutoScale 代表、エンジニアの小西です。
先日、「【エンジニア起業】小規模スタートアップがウェブサービス(SocialDog)を軌道に乗せるまで」というタイトルで発表させてもらいました。
発表資料:
www2.slideshare.net
この中で、「マーケティング施策は何をしていたのか」という質問を多くいただいたので、2016年7月に1人でSaaSを立ち上げ、なんとか軌道に乗せ、3年半かけてARR1億円を達成するまでにやったマーケティング施策(特に新規顧客獲得)についてまとめてみます。 これから SaaS を運営される方の参考にしてもらえれば嬉しいです。
マーケティング施策は、商材の種類、単価、顧客によって大きく変わってくると思うので、一つの事例としてご参考にしていただければと思います。
- サービス名の変更
- サービス名の商標登録
- 登録経路追跡の仕組みの整備
- 自社サービスに導線を乗せまくる
- オウンドメディアをコツコツ運用する
- LP の改善
- シェアツイート
- フォロワー数のグラフへのロゴ表示
- 調査系プレスリリースの配信
- Google リスティング広告
- アフィリエイト
- 週定例ミーティングとKPI管理
- 最後に
サービス名の変更
SocialDog は、最初「作業が効率化=スピーディー」→「早く走る動物」ということで「Cheetah」(チーター)という名前でリリースしました。
ただ、リリース後、以下のような問題があることがわかってきました。
- スペルが読めない(「Cheetah」と書いてあっても、なんて読んでいいか分からない。動物のチーターだと伝わらない)
- スペルが書けない(チーターとカタカナを併記していたのですが、アルファベットでは書けない」
- Cheater(詐欺師)と似ているため、勘違いされやすい
- 一般名詞なので、検索一位が取りにくい
すべての問題が結構致命的なので(笑)、リリースから3ヶ月後の2016年10月にはサービス名を変更することを決め、いくつかの候補から「SocialDog」にすることにし、ロゴも犬のアイコンを追記したものにしました。
【サービス名変更のお知らせ】
— 【公式】 予約投稿・アカウント管理なら SocialDog (ソーシャルドッグ) (@SocialDog_JP) 2017年6月5日
Twitter グロースツール「Cheetah」は、本日より「SocialDog」へ名称変更いたしました。サービス内容に変更はありません。
今後ともご愛顧よろしくお願いいたします!https://t.co/PGAb0k4fVr pic.twitter.com/n5Yz11qBf2
ロゴの決定やLPの作り直し、オフィスを借りたり、インターンを雇ったりなどの業務と重なって、実際にサービス名を変えるのは、2017年6月までかかってしまいました。今思えばサービス名は非常に重要なので、もっと早く変えればよかったです。優先順位の設定ミスでした。
しかしこのおかげで、上記の問題はすべて解決し、今ではTwitterで「愛犬」などと呼ばれて親しまれるようになりました。
サービス名の商標登録
「SocialDog」は、2019年にtoreruを使って商標登録しました。toreruは、本当にかんたんに商標登録できるのでおすすめです。
その後、「SocialDog」という言葉が他社のGoogleリスティング広告の広告文に使われる事案が発生しました。
Google では、広告文に他者の商標ワードが入っている場合、広告を掲載停止する対応とっています。商標登録したおかげで、Googleに連絡してこの広告を排除してもらうことができました。
そういえばこの前、「SocialDog」を商標登録しておいたおかげで、「SocialDog」を広告文に含むGoogle のリスティング広告を排除できた✌️
— koni | SocialDog🐶 (@koni) 2020年1月7日
商標登録に15万かけた意味あったhttps://t.co/V0jhctHEJU
登録経路追跡の仕組みの整備
リリース当初から、新規獲得の効率を上げるため、導線ごとの登録件数を測定できる仕組みを整えています。
具体的には、SocialDogへの導線へのリンクに utm_campaign パラメータを仕込み、SocialDogに新規登録する際に、その文字列もDBに保存しておきます。これによって経路別の売上、LTVなどを正確に把握できます。
アプリの獲得経路の測定には、AppsFlyer を使っています。
自社サービスに導線を乗せまくる
2011年(私が大学4年生のとき)に遊びで作った「whotwi」というサイトがあります。リリースから5年経っていましたが、当時月間600万PVほどありました。
whotwiは、Twitter IDを入力すると、Twitterのデータを集計して「仲良しな人」などを表示するのがメインのサイトです。Google Analytics などで調べてみると、「片思いのユーザー」(フォローしているが、フォローバックされていないユーザー)を一覧にし、まとめてフォロー解除する、という機能がかなり使われていました。
SocialDog は whotwiよりももっと便利にフォロー管理などの機能を使えるサービスです。サイト内にあらゆるところに導線を追加した結果、多くの方がSocialDogに登録してくれました。知らないサービス名ではクリックされなさそうなので、「予約投稿」「フォロー管理」、「自動フォロー」(※現在はありません)など、機能名でのリンクも多数設置しました。
このおかげで、初期は広告を行わなくても月間1万ユーザーくらいを獲得することができました。実際にユーザーがいないと改善したり要望を聞いたりすることもできないので、初月から数万ユーザーを獲得できたのは非常にラッキーでした。
もし自社サービスなどがあり、そのユーザーが新規サービスと親和性が高そうであれば、導線を大量に設置するのはマストだと思います。
オウンドメディアをコツコツ運用する
リリースから6ヶ月くらい経った2017年1月、オウンドメディアの運用を開始しました。 メディアをリリースしてから検索エンジンからの流入が発生しはじめるのには数ヶ月以上の時間がかかると踏んでいたので、早めに着手しました。
「Twitter フォロー返し」や「Twitter 予約投稿」といったキーワードで検索1位を取得することを目指し、役立つ記事を毎月10-20本程度執筆する体制を整えました。
最初の1年は月間1万UUに届かない月も多かったですが、コツコツ運用したことで、4年運用して月間数十万UUくらいまでアクセスが伸びました。「Twitter ツール」や「Twitter 予約投稿」といったキーワードでも検索1位を取ることができました。
オウンドメディアでは、自社サービスについてしっかり説明できますし、検索1位をとったキーワードについては需要が顕在化している層にしっかりリーチできるので、非常に効果が良いです。
Social Media Trend(ソーシャルメディアトレンド) | SNSマーケティングに関する最新情報をお届け
LP の改善
SocialDog のLP はリリースから1年おきくらいで4回ほどリニューアルしています。
最初は個人向けツールだったのですが、徐々にビジネスで利用されるユーザーが増えたため、それにあわせてLPの雰囲気を変えています。
リリース後もヒートマップ分析ツールを入れたり、Google OptimizeでA/Bテストを行ったりして、ちょっとずつ改善しています。
後述する広告経由のCVRが変わってくるので、これも初期からある程度やっていったほうがよいかと思います。
シェアツイート
「シェアツイート」は、無料プランのユーザーがSocialDogへのリンクつきのツイートをすると、無料プランの利用制限が少しだけ緩和される、という施策です。
SocialDog のユーザーさんには、完全に個人のアカウントで使っている方がかなり多くいます。 これらの方々からは料金をいただくことは難しいですが、シェアしていただくことで、運営にご協力いただく、という施策です。
デフォルトでは「フォローされている人が●●人います」というメッセージが入っていますが、テキストは自由に変えることができます。ここで「SocialDog使いやすい」などのポジティブなツイートをしてくださる方も結構いて口コミツイートからの登録につながっています。
フォロワー数のグラフへのロゴ表示
ツイッターで、「フォロワー数●●超えた!」などのツイートをする際に、SocialDogのグラフをキャプチャしてツイートされる方が結構いると気づきました。 この画像がシェアされた際に、「これなんのツールなんだろう?」と疑問を持った方がSocialDogにたどり着けるよう、グラフに薄くSocialDogのロゴを表示するようにしました。
リンクがないので効果は測定できませんが、ロゴが薄いのでシェアする側もそこまで抵抗感なくシェアできるのではないでしょうか。
1000フォロワー突破してた!!!🎉🎉🎉
— Tomoya (@t0m0120) 2020年12月10日
これからも頑張ってプログラミングとチャリ漕いでいくか!! pic.twitter.com/qQiyvFoSTJ
調査系プレスリリースの配信
2017年5月頃、PR Timesのスタートアップ向けの割引を活用して、調査系の記事でプレスリリースの配信も行ってみました。 大手メディアへも転載されましたが、ここからの登録はほとんどなかったため、数回やってやめました。
プレスリリースは、配信費用が1回3万円とかで安価に見えますが、調査を行って記事を書いたりと手間も発生するので、ダイレクトレスポンス的な効果を期待している場合はやめたほうが無難かと思います。「これからはブランディングを強化する」みたいなフェーズになったタイミングで再度実施するかもしれません。
株式会社AutoScaleのプレスリリース|プレスリリース配信・掲載のPR TIMES
Google リスティング広告
リリースから3ヶ月後頃には、だんだんユーザーが求めているものがわかってきたので、少しずつリスティング広告の出稿を開始しました。少しずつ予算を増やして現在も出稿を続けています。
これまでSNS広告やディスプレイ広告も試しましたが、やはり検索キーワードによって顕在化したニーズがあるとわかっているユーザーにのみリーチできるリスティング広告が、広告の中では一番はじめやすいです。
アフィリエイト
A8.net(2017年8月頃から)、afb(2018年8月頃から)の2社のASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)にてアフィリエイトを実施しています。 アフィリエイトで記事を作成するブロガーの方はTwitterアカウントの運用を行っている場合も多いため記事が書きやすいと思われます。2020年12月現在で約400件の記事を作成いただき、多くの流入につながっています。
アフィリエイトの成果地点は有料プランの申込後、はじめての課金が発生したタイミングとしています。この方法ならアフィリエイトにかかった広告費用がアフィリエイト経由の売上を超える、ということがないため、低リスクではじめることができます。
アフィリエイトは運用も楽ですし、いったん開始すればほとんど運用もないので、かなりおすすめです。
週定例ミーティングとKPI管理
獲得月ごと・経路ごとにユーザー獲得件数、売上、CPA、LTVをまとめた表を作り、毎週定例ミーティングでレビューし、PDCAをまわしています。
最後に
AutoScale ではSocialDogのマーケティングを担当いただける方を探しています! Wantedly よりお気軽にご連絡ください。